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コンサート当日は、徹夜明け。真っ白な太陽の光に包まれる街を、夏の匂いに胸躍らせながら帰宅した朝。
やっぱり古武道は晴れ男!すこしだけ寝て、お昼過ぎに原宿へ向かいました。
原宿駅でケイコさん、美青さんと落ち合い、会場近くのレストランで遅いランチ。
開場時間を少し回ったころにホールへ。
もぎりを抜けるとロビーからホワイエは人でごった返していて、その様子を尻目にちらりと会場を覗くと、
平面のホールに並べられた想像以上に多い客席に思わずびっくり。一列に27席×15列で、約400席。
客席に友人を見つけて話をしていたら「ステージが面白いことになってるから見てきたら」と言われて、
ぺたすたとステージに寄ってみると、ステージ上には大好きなスタインウェイのピアノ。
内心「やったー!」と歓声を上げながら鍵盤のほうに回り込むと、
譜面台にはA4より一回りほど大きいかと思えるサイズのディスプレイ。
既に楽譜が表示されていたけれど、眼鏡をしていないので何の曲かはわからず。(哀しいかな裸眼0.3以下)
そしてピアノの横、舞台奥のほうには画面を煌々と光らせているMacBook Proが一台。
画面には何やら音の高さや厚さを表しているかのような、黄色と赤のグラフみたいなものが表示されていたけど、
うーん、話には聞いていたけどよくわからず。(当たり前だけど)
すこし中央に寄ってみると、道山さんの尺八スタンド(勝手にこう呼んでいるけれど、正式な名称は不明)は、
よく見るスタンドと並んで長い尺八を置く用のものがセッティングされていて、いつもとちょっと違う感じ。
古川さんの譜面台にも既に楽譜がのっていました。しかもなんだかふっくらして見えるほど結構な量。
コンサートへの期待がさらに膨らみます。
いったんホワイエに出てワインをいただきつつ(この日はワン・ドリンク付)、友人としばし歓談。
定刻にホールに入り、3分ほど押して、開演。ひとときの夢の始まりはじまり。
■第一部
客電が落とされ、ステージには地明かりが入って、下手から古川さん、道山さん、妹尾さんの順で登場。
妹尾さんは上下黒のスーツにハンチング、白のワイシャツにシャンパンゴールドのネクタイ、足元は黒いスニーカー。すごく似合っていて素敵でした。
道山さんはダークブラウンのジャケットに、黒地に白で笹の葉模様が抜かれたシャツ、ボトムはすみません…失念してしまいました。
古川さんは黒の上下に黒シャツ、そしてとてもお似合いなショート・ブーツ。この日の席は上手側だったので、とにかく古川さんに釘付けでした(笑)。
客席からの拍手に軽く会釈して、スタンバイ。しんとした会場に妹尾さんのピアノが響く。
スタインウェイのピアノはころころと丸い音の粒が揃っていて、まるで光り輝く雨粒のよう。
そんなピアノで始まった一曲目は、「WATER ISLAND」。道山さんの尺八が色を添え、古川さんのチェロで一気に深みが増す。
一曲目にして、三人がここに集まりこうして音を揃えていることに、えもいわれぬ幸福感を覚えました。
美しすぎる「WATER ISLAND」、CDで聴くより何倍も色鮮やかな演奏でした。
続いて、「SASUKE」。古武道といえばこの曲。
さっきまでの「WATER ISLAND」とは打って変わって、俊敏で躍動的なこの曲。
曲が進むにつれて、少しずつ少しずつテンポアップして(してしまって?)、妹尾さんのソロに差し掛かるあたりでは相当な速さに。
妹尾さんの指の動きは見えませんでしたが、妹尾さんが口を真一文字に結んで鍵盤を叩いている姿ははっきりと見えました。
ぽろぽろと紡がれるショパンのエチュードのようなそのくだりは、何度聴いても感嘆するばかり。ライブ栄えする一曲です。
「SASUKE」を弾き終わり、「待ってました!」と言わんばかりの客席からの拍手に笑顔で応える御三方。
それぞれマイクを握って立ち上がり、妹尾さんが口を開く。「皆さんこんばんは」そしてさっと左手を上手に差し出して、
三人で声を揃えるようにして「古武道です!」。が、肝心の「古武道です!」がイマイチ揃わず(笑)。
「さっきまであんなに息が合っていたのに」と道山さんが笑い、古川さんからは「息は合うのにスケジュールは合わない古武道です」なんて発言も。
2週間前に始まった古武道初の全国ツアーも、早いものでこの東京公演で折り返し。古川さん「まあ5公演しかないですからね!」。
その発言を二人から次々とツッコまれ(笑)、公演数が少ない分「ただでは帰さない、ということでね」と格好良く決めた古川さん。
この瞬間、会場中の女性陣は古川さんに撃ち抜かれたに違いありません(笑)。
そして、中日の今日の東京公演はチケット発売早々に完売となり満員御礼…という話になると、
ここでまたも古川さんが「サントリーホールでやればよかったね!」。もう会場は爆笑の渦です。
妹尾さんが「いや、まだ新人なんだからそこは謙虚に」とフォローに回り、「あっ、そっか」と笑う古川さん。
でもサントリーホール案には大いに賛成!(笑)せめて紀尾井ホールとか、ツダホールとか、浜離宮とか?
古武道の三人の日程が合っても、ホールとの日程が合わなくて調整が難しそう。でも次は絶対に、音のいい音楽用のホールで。
続いて、レコーディングのときの話に。それぞれが個々の活動を終えた後スタジオに集まって録音、終了は深夜3時、ということもあったらしく、
会社員(笑)である古川さんは特に大変だったと振り返っておられました。
このとき「東京都交響楽団ね」と言った(言おうとした?)妹尾さんの言葉が、道山さんには「東京都響交響楽団」に聞こえたらしく、
「ひとつ多くない?」なんて突っ込みを受け、妹尾さんはもう一度言い直したりも。「東京都交響楽団」。
大変だった、という古川さんも、最後は「でもまあ楽しかったですよ」と笑う。この日の古川さん、終始チョイ不良(ワル)です。
そして話題は古武道結成のいきさつに。まずは、一曲目の「WATER ISLAND」に絡めて、千住明さんが三人の繋ぎ役だった、という話が妹尾さんから出る。
妹尾さんが道山さんのレコーディングに参加して…と話が進んでいるところに、古川さんが一言「僕は千住さんと面識なかったんですけどね」と切り込んで客席は爆笑(笑)。
そこを妹尾さんが慌ててフォロー。妹尾さんは古川さんとは大学の先輩後輩の仲で、という説明が加わりました。
再び千住明さんの話に戻ると、「あの人は本当に忙しい人でね」と千住さんがいかに多忙かというお話に。
大河ドラマ「風林火山」の音楽を手がけ、さらにそれ以外のお仕事もある中、「古武道のためなら」と書いてくださったこの曲。
ストリングスのレコーディングも千住さん自らタクトを振られたのだとか。
そのときも、さっとスタジオにやって来て「じゃあ始めましょう」と2・3テイクを録り、風のように去ってゆくという多忙ぶり。
そのお話を聞いて思わず感嘆のため息をこぼす客席。
そこで「『通販生活』っていう雑誌があるんですけど、その中で肩こりがひどいって言ってました」といきなり切り出す道山さん(笑)。
(注釈すると、「通販生活」は著名人が商品を使った体験談を話すページが毎号設けられていて、そこに千住さんが登場していた、ということ。
商品は確か、メディカル枕?だったような。余談ですがわたしは家族全員「通販生活」の商品愛用者。道山さんとはお仲間?・笑)
ここで「僕も肩こりひどいですよ」と肩を回し始める古川さん、いきなり話が脱線したのに慌てた妹尾さんが
「いや、オチがあるんだよ、オチが!」と必死にフォローするも、道山さん「いや、オチはないです」。ないんかい!(笑)と場内はとことん笑いの渦に。
個人的には千住さんの話題で出てきた妹尾さんの「(千住さんは忙しすぎて)本当にもう、鰹節みたいに削れてるんじゃ…」という発言が大ヒット。
すごく心配そうな表情でまじめにそんなことを言うもんだから、客席も笑わずにはいられません。
「WALTER ISLAND」に続く二曲目は「SASUKE」でしたと紹介があって、「ここからはそれぞれが作った曲を」とそれぞれが曲紹介。
「Best Friend」を書いた妹尾さんは、九州ツアーのことを。「瀧〜waterfalls〜」を書いた道山さんは、二人が書きそうにない曲を書いた、という話を。
それから、今日はすごく長い三尺という尺八をこの曲のために持ってきた、とも話されました。
そして「My Little Song」を書いた古川さんは、初めて作曲したと言ったあと、
「こんな風貌だから誤解されがちだけど、この曲を書いたことで僕がいかに純粋で真面目で純朴な人間かわかってもらえると思います」と笑わせます。
これには妹尾さんも道山さんもくすくす笑い。このあたりの話の中で、古川さんは妹尾さんからまたも「イベリア半島のテキヤ」だと言われていました(笑)。
少しの間。妹尾さんは客席に背を向けるようにして、ピアノの左に置いてあるパソコンを操作。
スピーカーから小さなカウントが聞こえてきて、「Best Friend」。初演を聴いた曲だから、個人的には思い入れもあって好きな曲。
ところどころCDに収録されている音とは違った音が入ってきて楽しい。けれど、欲を言えばもうすこし打ち込みの音を抑えても良かったかなと。
妹尾さんのピアノがオケに埋もれかけていたのがちょっと残念でした。またアコースティック・バージョンで聴くのも楽しみにしていようと思います。
続いて、「瀧〜waterfalls〜」。道山さんは尺八を長い長い三尺に持ち替えて演奏。
手が大きい人、もしくは指が長い人じゃないと指穴に指が届かないんじゃないかと思うほど長い三尺。
この曲を聴くたびに、千住博さんの「滝」を思い出します。目の前に静かな滝が広がるよう。
CDで聴いたときはそんなふうに感じなかったのですが、今回、この曲はなんだか武満っぽくもあるような気がしました。
そして古川さんの「My Little Song」。どこまでも澄み切っていて、優しく甘い一曲です。なのに古川さんのチェロは、特に高音域はどこまでも官能的。
チェロモン大放出(笑)。ぞくぞくするような色気のある、艶かしい音は古川さんの持ち味。うっとりしていると一曲が終わっています。
ここでも何かやりとりがあったように思いますが、公演後2日にしてもう殆ど思い出せず…無念。
一部最後の曲は「Tonight」。ここでも妹尾さんがパソコンをささっと操作して、スピーカーからイントロが流れ出します。
オケのエレピに、その場で妹尾さんが弾くピアノが重なる。たぶんそれは楽譜にはなくて、妹尾さんがその場で感じたままにフレーズを奏でているように見える。
三人の音が重なった瞬間に、胸の深いところを突かれたような気持ちになって、こんなにいい曲だったかなあとため息が出ました。
目の前に広がる湾岸の夜景、そしてテールランプの数珠繋ぎ。まだまだ夜はこれからだとでもいうような、熱い演奏。
道山さんが高音を出すときに、尺八の底を太股でふさいで演奏していたのが気になりました。初めて見た!
そんなことを考えながらまったり聴いていたら、曲の終盤が近づいてきたあたりでバツッ!という異音が。古川さんのチェロの弦が切れたのです。(妹尾さん曰く「展生、マジギレ!」)
しかしながら、そこは都響主席の古川さんです。一部アドリブを交えながらも、殆ど原曲のまま最後まで残った弦で弾ききりました。
弦が切れたのに気づかなかった人もいたのではないでしょうか。さすが、の一言に尽きます。
会場中が拍手に包まれて、下手側の妹尾さんから順に退場。休憩のアナウンスが流れるとともに、思わずため息。
■休憩
休憩中にちょっとお化粧室に、と思って会場を出ると、ホワイエとロビーは列、列、列!
女性用のお手洗いは特に混んでいて、これでは二部の開演に差し支えるのでは…?と思いつつもとりあえず並ぶ。
そういえば前にこのホールに来たときもこんな感じでした。男性用トイレを開放するとか、何か手立てはなかったのかしらん。
結局お化粧室を出てホールに駆け込むともう客電は消えていて、席に着くころにはステージ上に妹尾さんと道山さんが立っていました。
…えっ、妹尾さんと道山さんだけ?古武道のコンサートに武道のコーナーなんてあったっけ??
すると妹尾さんがマイクを握って、「妹尾 武と藤原道山の『武道』になっておりますが…」と話し始める。
なんと古川さんは、先ほど切れてしまった弦を買いに走っているのだとか。「皆さんのアツい視線に見つめられて弦が切れてしまいました」なんて冗談も。
「お客さんと時間だけは待たせるわけにはいかないので」と妹尾さん。
古川が帰ってくるまで何か一曲やりましょうか、ということで道山さんから「じゃあ妹尾さんの『蒼茫』をやりましょうか」。
思いも寄らないハプニングで、図らずして武道の演奏が聴けることになった客席からは思わず拍手が。(古川さん、ごめんなさい)
武道の「蒼茫」は、つい二日前に下丸子で聴いたばかり。あの日のことがぱっと鮮やかによぎります。
もう何度も聴いているのに、聴くたび新鮮に感じられて、目の前には蒼々とした大好きな海が広がるようです。
二人もこの曲に関してはすっかり知り尽くしている様子。お互いの呼吸さえつかめれば、事前のリハーサルや楽譜がなくても何の不安もないといった感じです。
何のハプニングもなくきれいに曲が終わると、客席からは大きな拍手。
「ひとときのお慰みになりましたでしょうか」というような台詞のあと、妹尾さんが「(古川さんがいないので)一応これは二部…」と言うと道山さんから「いや、休憩にしとこうよ」。
「ではこれは休憩中の音楽をお楽しみいただいたということで…」と言って笑う妹尾さんに、思わず客席も笑います。
上手側の客席にいたわたしたちには、舞台袖下手側で舞台監督が両手を手を上げ、頭の上で○をつくってOKの合図を送るのが見えて安堵。
道山さんがその合図を受け取り、妹尾さんとともに「では仕切りなおしということで」と、もう一度ステージを下りる。
同時にステージの照明は落ち、客電が点されて休憩のときと同じ状態に(笑)。まさかステージを下りるとは思わなくて、客席はそこかしこから笑い声が。
■第二部
そんなわけで、レポもここからが二部ということにさせていただきます(笑)。
客電が落ちてからしばらくあって、「鳥の歌」のイントロで流れる異国のカフェのような心地良い雑音が流れるなか、古川さんを先頭にして古武道が登場。
戻ってきた古川さんに「おかえりなさい!」といわんばかりに、客席の拍手はいっそう大きくなります。
二部になって三人は衣装替え。一部の黒メインの衣装とは打って変わって、今度は白メイン。
古川さんは白のシャツ(ちなみにボタンは2個開き・笑)にジーンズ、一部と同じ素敵なショートブーツと至ってシンプル。
妹尾さんは白いジャケットに下丸子でも着ていた渚橋のような淡い水色のしわ加工は施されたラフなシャツ、白のハンチング、胸元にはシルバーネックレス。
ボトムはトロピカルな柄が白抜きされている履き慣らしたジーンズに、足元はキャラメル色のPUMAの革靴。
道山さんは裾がほつれたようなデザインの白いジャケット、グレイ地に黒で何かの模様が描かれたシャツ、胸元にはシルバークロスのネックレス、そしてボトムはジーンズ。
全体的にラフで、ちょっぴり夏らしく爽やかな感じです。
流れていたイントロが消えると同時に、チェロのピチカートによるどこか淋しげなあのフレーズ。ぴんと張られた弦はまだ新しい音がして、ちょっと硬い音。
道山さんの尺八と妹尾さんのピアノが加わると、切なさ倍増です。カザルスが聴いたらどんな風に感じるだろう。
至極日本的な、けれども原曲の要素を失わないアレンジは素晴らしいです。拍手。
続いて、ラフマニノフ「Adagio Sostenuto〜ピアノ協奏曲第2番第2楽章」。妹尾さんの両手が最初の和音を鳴らしたときに、ぐっと唇を噛みました。
ずっと生演奏で聴きたくて、ここしばらくは妹尾さんにお会いするたびずっとプレッシャーをかけ続けていた(本当にすみません)この曲。
曲が始まるとしばらくして照明が変化して、ホリゾントに大きく3つ、磔にされたキリストと使途二人が描かれたステンドグラスの模様が浮かび上がりました。
(もしかしたら計算なのかもしれないけど、仕込みの時点でネタが裏表逆に入れられてしまったのか、3つのうち2つが左右反転された形に浮かび上がっていたのが気になりました)
あまりに美しい旋律。終盤に差し掛かるときのチェロと尺八の音の重なりや、クライマックスの色鮮やかなピアノの音色。もう涙を禁じ得ません。
個人的には、今回の「ロマンティック・コンサート」の目玉といっても良いと思えるような甘美なひととき。
最近ラフマニノフの生涯を書いた本を読んだばかりだったので、彼のことも思い出しながら聴いていました。
故郷のロシアをこよなく愛し、その美しく雄大なさまをそのまま楽曲に落とし込んでいったラフマニノフ。
そういうところも、なんだか妹尾さんと似通っているように思います。
終演後の握手会ですこしお話しさせていただいたとき、この曲が特に素敵だったと言葉足らずにお伝えすると、妹尾さんはにっこりと笑顔で返してくださいました。
この曲を演ってくださったこと、本当にうれしく思います。これだけでも聴きにきた甲斐がありました。
演奏する側も大変な曲だろうとは思いますが、これからもぜひどこかで演奏していただけたらと思います。
…やっぱりこの曲だけ長くなってしまった。
ピアノのペダルが上がり、最後の響きが消えて一瞬の静寂の後、客席からは大きな拍手が贈られました。
椅子から立ち上がる妹尾さん、そして古川さん。各々にマイクを握り、古川さんが開口一番「すみませんでした!」(笑)。
切れたのはD弦で、こないだ練習していて切れて、別のコンサートでも切れて、他の弦のスペアは売るほどあるのにこの弦のスペアだけなかった、という説明がありました。
「でもよく演奏したよね」という言葉に、「途中でやめようかと思いましたよ(笑)。冗談ですけど」とおどけて「アドリブでやらせてもらいました」と返す場面も。
古川さん曰く「最近、破壊癖があるんですかね」。こないだは100円パーキングで車を擦って凹ませ、ゴルフでは後ろにあった木にクラブをぶつけて真っ二つにし
(同じことをタイガー・ウッズもやったことがあるのに、古川さんは70ヤードも飛ばなかったそうな)、今度はチェロか!と。
それに対して妹尾さんが「でも楽器本体じゃなくてよかったね。だってほら、お安くないって聞くし…」と言うと、これには会場も爆笑(笑)。
自分がいない間に演奏されたのが、「『蒼茫』というね、もともとはピアノとチェロのための!曲でしたが」と二人をチクリと刺すも、
道山さんが「いやいや、展生くんを思って演奏したんですよ」と上手にフォローする場面もありました。
続いて先ほど演奏した楽曲の話になり、カザルスの「鳥の歌」とラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番第2楽章」を改めて紹介。
特に後者について話が膨らんで、「妹尾さんはラフマニノフ大好きですからね」と振られて、「そうなんですよね」と妹尾さん。
この曲が本当に好きで好きで、「恋文を書くような…恋文って言わないですよね(笑)。ラブレターを書くような気持ちでした」と照れたように話したあと、
本当にいい曲はどんなアレンジでやってもいい、と仰っていました。
■ソロコーナー
ひとしきり話が落ち着いたところで、道山さんから「ではここで古武道は一旦解散して(笑)ソロで一曲ずつ」。
こうしてソロでも演奏できるところが古武道の良いところだとも仰っていました。
今まで神戸・札幌と演奏順をじゃんけんで決めてきましたが、「今回もじゃんけんで。いいよね?」と道山さん。
他に何もないから良いよと笑う二人、そしてじゃんけんを始めようとしたところで道山さんが「ちょっと待って!」。
神戸と札幌ではじゃんけんで演奏順を決めるとしたのはいいものの、勝ったほうからやるのか負けたほうからやるのかを決めてなかったために、
じゃんけんしたあとでどっちからやるのか決めていた、という事情を知っている一部ファンは大受け。
(ちなみについ二日前の下丸子でも、妹尾さんと道山さんはじゃんけんをして演奏順を決めたのだけれど、このときもどっちからやるか決めてなかった・笑)
同じ轍を踏むところだったと気づいた道山さんは、「じゃあ勝ったほうから」!じゃんけんをすると一回目に古川さんが負け、次に道山さんが負ける。
演奏順は妹尾さん、道山さん、古川さんという、下手から上手へと流れるよう決定。
トップバッターの妹尾さんは、二部になって持ってきた紙をかさかさとめくりながら、
「今回リクエストをweb上で募集したじゃないですか。たくさんいただいたんですけど」これだけあるともちろん選に漏れてしまったものもあるわけで、
そのなかから「数少ない男性陣のリクエストにお応えして、『天気雨』という曲を」。意表をついた選曲に思わず「ARIAの曲だ」と呟きが漏れました。
マイクを置いてから少しの間静かな間を置いて、妹尾さんは高音域できらきらとしたイントロを紡ぎはじめる。
そこから聞き覚えのあるフレーズにつながっていって、CDよりもぐっと落ち着いた印象の「天気雨」がそこに生まれました。
前に「港めぐりツアー」でもこの曲のリクエストがあったように思います。そのときは同じ「ARIA」から「Smile Again」が演奏されましたが、根強い人気があるのですね。
リクエストが選ばれた男性にはすごく良い思い出が出来たのではないでしょうか。「ARIA」をきっかけに男性のファンが増えたのはうれしいことです。
演奏後、マイクを取って「次は藤原道山にバトン・タッチ」。
道山さんは見覚えのある模様の入った尺八を手に、目を閉じて最初の一息を吹き込む。曲は、「鶴の巣籠」。
ころころとした音色。まるで鶴が呼び合う鳴き声のような、音楽としても単なる音としても楽しい一曲。吹き合わせで聴くとなお楽しい。
古典の曲にしては聴きやすく(というのもこの曲は古典本曲の中でも、独奏曲としては最も新しい部類に入るのだとか)、
この日初めて道山さんの尺八を聴いた人にも楽しめたのではないでしょうか。
演奏が終わると道山さんもマイクを取り、「『鶴の巣籠』という曲でした。それでは次は古川くんに」バトン・タッチ。
古川さんは最初に曲紹介。どういう流れだったかちょっと忘れてしまったのですが、「『Julie-O』という曲を」。
思わずわたしとケイコさんは顔を見合わせ、歓声を上げました。まさかまさかの、マーク・サマー!
マイクを置くと、チェロとともに手にしていた弓を譜面台に置き、すっと一息吸ったかと思うと目にも留まらぬ速さのピチカートの連続!
右足でリズムを取りながら、時折ネックを叩くようにして演奏する場面もありました。
そのさまに見とれているとさっと弓を取り、重厚な音色でメロディーラインを紡ぎます。ケルトっぽさもある、異国情緒漂うメロディ。
そして今度は床に落とすようにして弓を手放し(!)またピチカート。観客の目は釘付けです。
妹尾さんのほうをちらりと見ると、妹尾さんもピアノの向こうを覗くようにしてすっかり見とれている様子(笑)。
最後にもう一度弓を手にして弾き、弓が弦から離れると会場は喝采に包まれました。
(「Julie-O」、原曲はこちらで試聴できます)
三人の演奏が終わるとそれぞれがマイクを握り、妹尾さんが古川さんの弾いた「Julie-O」について、「これね、僕がリクエストしたんですよ」。
思わず「妹尾さん、Good Job!!」などと口走るわたしとケイコさん(笑)。古川さんのソロはバッハで来ると思っていたから思わぬ変化球でした。
この曲でネックを叩きながら演奏する場面があったことを回想し、妹尾さんは「さっきも言ったけど、チェロってお安くないんでしょう?あんなバシバシ叩いて(と叩くしぐさ)大丈夫かなって…」。
すると道山さんも「途中で弓を床に置いたじゃないですか。あれもあんな、ガターンと置いていいのかなって…弓も安くないんですよね?」というようなコメントを(笑)。
二人が真剣に心配するのをよそに、古川さんは余裕ありげに笑っていました。
■リクエスト・コーナー
「ここで古武道再結成です」と道山さん。ここからは事前に三人のwebサイトでのみ告知・募集した、リクエストにお応えするコーナー。
リクエストはたくさん集まっていて色んな曲があったけど、となるとやっぱり選ばなくてはならないわけで。(先ほどの妹尾さんのソロコーナーでもそんなお話がありましたが)
リクエストの曲に行く前に、いただいたメールの中からメッセージや質問をそれぞれ読もうということに。
妹尾さんが三枚の紙をそれぞれに手渡しながら「はい、これ展さん。道山。」。くだけた呼び名に、なんだか楽屋を覗いているような感じ。
古川さんからメッセージを読み上げます。古川さんが手にしたのは、「チェリッシモ」さんからのメッセージ。
「僕のアルバムのタイトルをパクってますね!」とおどけながら紹介(笑)。
たしかこの方から(もしかしたら道山さんが読んだ方だったかも)、三人がお酒が好きということで、酔うと三人はどんな風になるのか、という質問が。
古川さんは飲むペースが早く、ナチュラル・ハイになる…というようなことをご自身が仰っているそばから妹尾さんが、
古川さんは飲むと褒め上手に磨きがかかってすぐに「(関西弁で、ものすごく感情をこめて)素晴らしい!」と言い出す、と暴露。
それを聞いた古川さんは慌てて否定、「そんなんじゃないですよ!『(標準語で、大人しく)素晴らしい』とね」。
古川さんはこの後もツッコミが続きそうなのを察知し、道山さんに流して回避(笑)。
道山さんはあんまり変わらないそうで、口当たりがいいものならどんどん飲んでしまう、とのこと。
古川さんは早くツッコ見たい様子で、道山さんは軽く流し、「お酒といったらなんと言ってもこの人ですよ」と妹尾さんに話を振る。
あの、皆さんが聞きたいところ申し訳ないんですが、わたしこのくだりをあんまり覚えておらず…。
なんだかすごい、ってことはなんとなく覚えているんですが…本当にすみません。覚えてる方、フォロー願います。
最後に「じゃあ今度それ実証しようよ」と妹尾さんが言って、この話題は一段落。ちなみにこの質問をした方のリクエストはピアソラの曲でした。
続いて道山さんがメッセージを読み上げます。道山さんファンの方のメッセージで、リクエストはリストの「愛の夢」。
道山さんの読み方がなんだかラジオのDJのようで、妹尾さんが即興でBGMをつけるという場面も。おかげで内容をまったく覚えていません(笑)。
最後に妹尾さんがメッセージを読み上げたのですが、これがリクエストが採用された方のもの。
選ばれた曲にはたくさんの方からリクエストがあったそうで、メッセージを読み上げられたのはその中から選ばれたひとり。
メッセージの内容はちゃんと覚えてないのですが、とにかくロマンチックな言葉で古武道を褒めちぎるような感じで(笑)、
読み上げる妹尾さんも「これ読むの恥ずかしいなあ」とちょっと参った様子。
そして発表されたリクエストは、ピアソラの「リベルタンゴ」!客席からは歓声が。もちろんわたしもそのひとり。
この曲のアレンジを前夜に仕上げたという妹尾さんは「僕、初ピアソラです」。
前夜といえば、古川さんは別のコンサートがあったはずだし、道山さんも舞台の稽古があったはず。…ということは、今日になって初リハーサル?
それもたった一回の演奏のために。なんというサービス精神!感激です。
くすぶるような炎がだんだんと燃え上がっていくようなアレンジ。このアレンジがとにかく良くて。
楽曲のよさを活かしつつ古武道ならではの見せ場がちゃんと用意されていて、秀逸。妹尾さんのアレンジャー魂には脱帽です!
古川さんのソロコンサートでは聞いたことがある曲でしたが、妹尾さんの手にかかるとこんな風になるんですね。
特に盛り上がりを見せた後半は鳥肌もの。妹尾さんの鍵盤を強く叩くような演奏が今でも耳に残っています
前に川口でチック・コリアの「Spain」を聴いたときの衝撃を思い出しました。もう一度どこかで聴けたら良いのにな。次のCDに収録を熱望します!
演奏を終えた瞬間の客席の拍手は、間違いなくこの日いちばんのものでした。お疲れさまです。本当にありがとう!
■本編ラスト
早いものでコンサートももう終わり。最後は二曲続けて、と妹尾さんが紹介されたのは「My Favorite Thing」、そして「Dagula」。
「My Favorite Things」は「もともとは『サウンド・オブ・ミュージック』のなかの曲で、日本語では『わたしのお気に入り』というベタな邦題がついてますが…」という解説もありました。
「My Favorite Things」は先月末に「Classy Concert」でも聴かせていただきましたが、これこそわたしのお気に入り(笑)。放送を録音して、今も繰り返し聴いています。
道山さんの尺八が奏でるメロディに、妹尾さんの儚げなピアノが重なるイントロ。そこからピアノ、尺八、チェロの順にメロディを歌い継ぐ形で曲は展開されてゆきます。
これもJazzyなアレンジが素敵で、
歌詞で言うならば「Raindrops on roses and whiskers on kittens」や「When the dog bites, when the bee stings / When I'm feeling sad」のあたりは全体的に弾むように、
そしてそれに続く「I simply remember my favorite things / And then I don't feel so bad」はとにかく伸びやかに歌うように。
メリハリがきいた演奏は、聴いているこちらのこころをとにかくワクワクさせてくれます。
歌詞のように、哀しいときこの曲を思い出せたなら「And then I don't feel so bad」♪こちらもぜひCDに収録してもらいたいところ。
最後の曲「Dagula」は、妹尾さんの奏でるメロディからはじまり、尺八に歌い継ぐ形。そこにチェロが入ってCDと同じアレンジに。
終盤のベルの鳴り響くような音は、妹尾さんの操作するパソコンから。
その音が流れるなか三人が演奏を終えて立ち上がり、妹尾さんがマイクを取り、「チェロ・古川展生、尺八・藤原道山、そして妹尾 武」と古武道を紹介。
一人ひとりに大きな拍手が贈られるなか、最後に「今日は本当にありがとうございました」と揃って深々とお辞儀をして、妹尾さんからステージを降りて行かれました。
■アンコール
三人がステージを降りて、スピーカーからのオケが消えても拍手は続き、拍子が揃ってアンコールを求める声へと変わります。
その声に応えるように、早々とステージに戻ってくる三人。拍手はいっそう大きくなります。
登場して最初に、古武道を結成してCDも出し、こうしてコンサートが出来たことに対するお礼を客席に。
感謝するのはこっちのほうです。お忙しい中こんな作品を作って世に送り出してくださって、コンサートではこんなに幸せな気分にしてもらえて。
次に、古武道から重大告知。「明日から放送される『いち髪』のCMの曲を、古武道が担当させていただきました」と道山さん。
会場からは拍手と歓声が。すごいですね〜新人とは思えません。(新人だと思ったこともあまりないのですが・笑)
そして「今日はその曲を演奏したいと思います」!この時点でもう大喝采です。期待に胸を膨らませる客席に「でも30秒しかないですからね(笑)」。
「世界初公開です」と言う道山さんに「いや、日本初ぐらいにしとこうよ」と妹尾さん(笑)。
こうして「風の都(仮)」(この時点では仮でしたが、妹尾さんのブログを読んだ感じだと決定かな?)は日本初公開と相成りました。
和の情緒がぎゅぎゅっと凝縮された30秒。都の石畳の上で踊るように舞う花びらが見える、古武道らしい曲だなあという印象でした。
演奏後には妹尾さんから「CMではハープとかストリングスも入ってますから」という言葉もありました。確かにCMで聴くのは豪華版。
それに比べるとこのときの演奏はごくごくシンプルな構成でしたが、洗練された良さがありました。
そしてここで個々の告知。
古川さんは今年デビュー10周年を迎えたということで、その記念企画が目白押しだとのこと。ここではピアニスト・菊池洋子さんとのコンサートを告知されました。
続いて道山さんはこの夏に天王洲の銀河劇場で上演される、ジョン・ケアード演出の「錦繍」に音楽で参加されるとの告知。(観に行きますよ〜)
現在稽古中で、今日はその稽古をサボってこのコンサートにやってきた、なんて冗談も飛ばしていました。
最後に妹尾さん。「特に告知することもないんですが…」と言いつつ、7月11日に発売される筒美京平さんのトリビュート・アルバムに、
秋川雅史さんの「飛んでイスタンブール」に編曲として参加させていただいたとの旨を告知。
秋川さんは独特の声の方なので…という話題で、妹尾さんが思わず「飛〜ん〜で〜イスタンブ〜ゥル〜♪」と秋川さんそっくりのオペラ声(笑)で歌い出し、客席は大笑い。
しばらく笑いが止まりませんでした(笑)。「異国の舞踏会に迷い込んだような」斬新なアレンジになっているそうです。要チェック。
でも聴くたびに妹尾さんの「飛〜ん〜で〜イスタンブ〜ゥル〜♪」を思い出してしまいそう(笑)。
「新月に始まったこのツアー、中日の今日は満月です」という道山さんの言葉があって最後の曲に紹介されたのは、「朧月夜」。
再び客席に感謝の言葉を述べて、演奏に入りました。客席全員が必死に耳を傾けます。
本当に美しい、「朧月夜」。暗い夜道を照らす満月の光ような、希望に満ち満ちた演奏。個人的にすごく思い入れが深いこの曲。すこし泣きました。
演奏を終え、深々と頭を下げる古武道の三人。この三人がこうして出逢ってここにいること、そしてその場に自分もいること。
言葉に尽くせない感謝をこめて拍手を贈りました。
古武道のお三方、素敵な夜をどうもありがとうございました。
これからの活動を、今から楽しみにしています。古武道がこれから先、10年、20年と続きますように。
■おわりに
相変わらずの駄文ですが、なんとなくでも感じが伝わっていれば幸いです。
今回は(今回も?)全体のまとまりなんかをまったく意識せず、覚えていることを全部書こうと思って一気に書き上げました。
公演後2日にしてすでに記憶はこぼれ落ちはじめています。正しくないところも、ところどころあることでしょう。
それでもなんとか形にしておきたくて、こんなレポを書きました。
わたしがこれを頼りにするように、願わくば誰かの記憶のしおりになれたらと思います。
初めて三人の演奏を聴いたあの夜から2年。
その日のレポを読み返していて、
このとき既に古武道(当時は「男子三楽坊」笑)の結成を望んでいた自分を思い出しました。
2年のときを経て、正式にこうして三人がデビューしたこと。心からうれしく思います。
最後にもう一度、ありがとう。大袈裟じゃなく、今生きていて本当に幸せです。
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